オー・ヘンリーの短編集に「二十年後」という作品がある。若い時には肩を並べて馬鹿を言い合った者同士が20年後のこの日にこのレストランで再会を誓い合い、その当日の様子を描いたショート・ショートな作品。名作だと思う(ちなみに、オー・ヘンリー短編集は心温まる物語が多く、ことあるごとに読み返す私の古典である。「賢者の贈り物」、「最後の一葉」が有名。「取り戻された改心」が個人的に好き。読んでいない方には一読をお勧めする。)。物語「二十年後」の二人の立場は大きく変わり、予想できないものとなっていた。
これと同じ状況が、今後の我々の日本社会にも降りかかると思われる。つまり、現在のアベノミクスで比較的活況を呈している経済・社会状況が、二十年後には、極端なまでの不況と社会的困難が発生しているのではないかと予想されるのである。
日本創成会議(民間団体)は、現在、約1800ある自治体のうち、「2040年には日本では896の自治体が消滅する」と平成26年5月に発表した。この提言は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推移データを基本にして予測しているものである。政府機関をはじめとする多くの経済予測は当たらないが、人口予測は確実に当たると言われているため、これはほぼ近未来の日本の姿となる。我々は、こうした二十年後の人口減や自治体消滅を予測できてはいるが、そこで発生する問題の多くをリアルに想像できていない。また、その問題を解決する方法やグランドデザインを描けていない。この点に本当の日本の危機がある。
翻って、我々一人一人がこのような状況に対応していかなければならない点は、はっきりしている。政府や自治体、マスコミが真剣に考えない状況下だから、同じように我々も何も考えないというのは、無知に過ぎる。我々こそが、真剣に今から考えるべきだと思う。
なぜ、政府、自治体、マスコミ、そして我々が人口減から派生する問題や課題をリアルに想像しないのか。これらのことを考えている人々(学識者、公務員、マスコミ幹部などや我々)が60歳程度の高齢になっていることも大きな要因だと思う。すなわち、多くの高齢者はこの先長く生きることを想定していないため、目の前の問題であっても「問題先送り」を主張し、現在享受できている権益を守ろうとする傾向が著しく強いからである。現在、全体有権者に占める50歳以上の有権者の割合は約54%であるが、東京五輪が開催される平成32年(2020年)には60%となる。高齢者は若者より考え方や行動が保守的である。
震災復興においても、若い人の意見は採用されず、高齢者の主張が通りやすいと聞く。これは、議員としては圧倒的な高齢者の票数を意識せざるを得ず、多数決で物事を決めている限り、保守的な問題解決の手法ばかりが講じられ、本質的な事態解決への道筋は採用されない社会的構造となっているのだと思われる。
我々は、こうした社会状況を冷静に分析しつつ、二十年後に向けて自らの在り方や価値観の転換を行わなければならないし、かつ、それに対応するよう行動を変えていく必要がある。私が約30年前に大学を卒業したときは、日本国内で生活している以上は、英語は全く必要ないと考え、英語の習得を完全に無視してきた。しかし、状況は劇的に変化した。同じように、我々のビジネスについても、積極的に新しいことにチャレンジし、先進的若者を超えるアグレッシブな行動力と考え方を意図的に採用し、実行しなければならない。
平成27年12月1日 20年後は72歳となるのか!という驚き 公認会計士村山秀幸