山形市の村山公認会計士事務所|経営サポート税務相談 税理士

コラム

コラム

大事なのは利益か、資金か?

    経営において、「まず、大切なのは、利益か、資金か」と問われることがある。

 この2つは、経営の両輪だが、まず、資金ありきと私は考えていた。しかし、「資金繰改善と利益計画」と題したセミナーで、公認会計士である、とある講師が、利益が資金よりも大切だと明言していたので、若干の衝撃を受けた。そこで、この機会にちょっと考えることとする。

 会計においては、通常、「利益は意見であるが、現金は現実である」(Profit is opinion, but cash is reality.)と言われている。その意味は、利益の額は、経営者の意思によって、ある程度変えることが出来るので、「意見」と言われるのに対し、現金は、経営者の意思によって変えることが出来ないし、その有り高は「現実」であるからである。

 また、「勘定合って銭足らず」と言われることもある。すなわち、利益が計上されていても現金が不足し、黒字倒産ということもあり得るから、現金は大切だということを強調する慣用句となっている。なぜ、黒字倒産が発生するのかを少し説明すると、次のようになる。今、商品を仕入先から100購入し、手形を振り出したとしよう。そして、これを130で得意先に売ったとすると、30の利益が発生する。しかし、得意先から130の販売代金を回収する前に、仕入先に商品仕入代金100を支払わなければならないとしたら、この100の現金を銀行等から調達(借入)しなければ、仕入代金を支払うことができなくなり、手形の不渡となってしまう。そして、倒産してしまうのである。このようなことが起こらない会社経営にするために、先の慣用句を戒めに使っているのである。

 さらに、また、毎期、赤字を計上していても、資金が枯渇しなければ、会社は倒産することはない。その代表例としては、通販大手のアマゾンを挙げることが出来る。書籍販売を皮切りに、今やありとあらゆる商材をネット販売しているアマゾンは、その事業の新規性から設立当初から10年以上赤字であったが、株式市場から増資資金を調達し続け、事業を発展させて、黒字転換することに成功した。最近では、ウォルマートを頂点とする世界ランキングの10位に浮上したばかりでなく、売上高成長率が最も高い業態の小売業としてニュースに取り上げられている。

 上記のことを公認会計士であるその講師は知らないはずがない。それなのに、資金より利益の方が大事であると明言するのはなぜか。

 これは、現在の経済状況や金融環境が、その判断を左右していると思われる。

 すなわち、今は、資金を調達することよりも、利益を稼ぎ出すことの方が難しい時代だからだと考えられる。銀行等の金融機関は、預金等で集めた資金を企業に貸し出ししたり、有価証券等で運用したりして、利鞘を最大化して稼ぐ。しかし、日銀のマイナス金利政策の環境下にあって、有価証券等の金融商品の利回りが著しく低下しているし、また、企業の資金需要が盛り上がらない中で、金融機関の貸出金残高は趨勢的に減少し続けている上、競争を反映して貸出金利が低下し続けている。よって、貸倒れリスクがある先にも、金融機関としては結果的に資金を貸し出すという状況となっている。会社の利益率以上の金融機関の貸出金利はあり得ない。会社の利益率の向上や儲けられる構造への転換こそが、今の経営者の課題なのである。

平成291210日  付加価値が上がるビジネス分野はどこか? 公認会計士 村山秀幸