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コラム

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社会的マイノリティが革新を生む

 社会的にまあまあ成功した人(例えば優良中堅企業経営者や弁護士・医者など)や公務員・銀行マンなどは、社会的な常識があり、また小金持ちでもあり、現状の社会や自分の境遇にほぼ満足している人がほとんどだ。大企業や高収入のサラリーマンはもちろん、大部分のサラリーマンも安定した収入があるため現状に多少不満足でも、だいたい世の中を受け入れている。このような人は、自らの社会的地位を捨てるような行動を起こすことをけっして選択しない「社会的安住者」となっている。無一文から事業を興した事業家は、スタートは現状に強烈な不満を抱く者であり、圧倒的な努力を積み重ねて現在の地位を築くのだが、一旦、裕福な環境が形成されると現状に満足してしまうのである。2代目、3代目は、初代が抱く現状に対する強烈な革新意識を持たない者が多い。また、事業家に必要な起業家精神が希薄な者が多い。

 この数年、人々に対して常識的な行動や振る舞いをするような社会的な圧力や風潮が強くなってきた。古くは子供に対する教師の体罰の排除から始まり、酒飲み運転の重罰・罰則化、禁煙法の制定、時間外労働等撲滅に関する働き方改革などコンプライアンス(法令遵守)の重視、各種スポーツ団体の体罰・暴力団体との交際・弟子への暴力などの一連の不祥事などへの報道が目立つ。この動きは「社会的安住者」にとっては有利に働く。マスコミは、社会的弱者からの訴えや実態に対して、視聴率が取れるため、繰り返し放送・放映する。しかし、一方で、佐川国税庁長官の虚偽答弁などや身体障害者雇用の人数に関する政府や行政機関の「嘘つき」ぶりには唖然とするが、マスコミの報道は著しく弱い。なぜ、日本のマスコミがこのような報道態度を取っているのか、マスコミの真実を伝える発信力がかくもこのように衰えたのか、を各人が考えてみる必要がある。また、報道すべきニュースの放映時間や力点が日本の支配階層に著しく弱いのかの原因が何であるのかを、国民の一人一人はなんとなく感じていると思う。

 私は、このような原因の一つとして、マスコミ関係者の「社会的安住者」化があると思う。

 マスコミ関係者は、他の一般的サラリーマンよりも通常、高収入であり、また、一定の社会的地位がある(取材の名目でいかなる人、場所、時間を超える)。したがって、そのような現在の社会的地位を捨てることが見え見えの行動をとらない。よって、政治家や政府関係者への社会的非難を行うことは、出世が望むべきもなくなることを意味している。故に甘い追求となる。

 社会的マイノリティは、もともと「社会的安住者」の地位にない。現状の社会から、阻害され、排除され、孤独・疎遠になり、毎日を暮らしている人が多い。身体障害者、躁鬱病発症者、ADL(ゲーリック病)発症者、性転換者などにとってみれば、現代は生きにくい社会だろう。しかし、その生きにくさの中で、工夫して、自らを実験台として、試行錯誤しながら、より良い普通の生活を実践するために、日々苦闘して暮らしている。しかし、社会的マイノリティこそが革新を生む。社会的マイノリティは、現状に強烈な不満を抱く者であり、サラリーマンの中にも少数ではあるが、一定数存在する。「社会的安住者」は決して世の中を変えることはできない。革新(イノベーション)の最大の障壁・障害は、「社会的安住者」の意識や価値観である。変化を恐れない能動的行動こそが打破する唯一の方法であるが、それは現代日本にとって最も難しい課題である。それは、自分についても言えるのである。

 平成3091日   革新を、戦後で最も求められる時代に   公認会計士 村山秀幸