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コラム

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景況感と長期的トレンド

  年初から下落していた株価が落ち着きを取り戻した。その背景は、原油価格に底入れ感が出てきたことと為替レートが安定してきたことにある。歴代内閣の中で最も株価を気にする安倍内閣が黙示的に目標として掲げているのは、高株価維持である。日銀はその先導的役割を果たしていて、黒田総裁が就任してから、インフレターゲット政策、国債大量買入れ(市中への大量の通貨投入)、マイナス金利政策を日銀内の政策委員会の決定をいとも簡単に通して実施した。安倍内閣が株価を重視するのは、株価が高くなれば、いわゆる資産効果が働いて、土地売買や商品売買が活発化し、カネの循環が良くなり景況が好転すると考えているからである。しかし、実際のところ、これら一連のインフレ政策を採用し続けていても、日銀が目標とするインフレ率2%にはほど遠い状況にある。

 これだけ市中にカネが余っているのに、設備投資は増えず、また消費は堅い動きだが、景況感は良いとは言えない状況である。これは、どうしてなのか。

 これは、何も日本だけの状況ではない。アメリカやヨーロッパでも、同じように低金利政策を採用し、有効需要を喚起しようと躍起になっている。しかし、これらの国々でも、それほど、景気が上向かない。

 なぜなのかを考えると、平たく言えば、人々が買いたい物がなくなったということだと思う。家や自動車、家庭用品等は、ほぼ揃っているし、スマホやPCも購入してあるという人々にとっては、新規に買いたいものがないため、既に所有している物の更新需要しかなくなったのだと思われる(新興国では、モノが行き渡っていないため、需要旺盛である。)。

 かつての高度成長時代は違っていた。例えば、三種の神器と呼ばれる炊飯器、冷蔵庫、洗濯機など、画期的な商品で家庭に必要で便利なモノが開発され、それらは爆発的に売れた。更新需要でない、新規の新しい需要が掘り起こされた。

 三種の神器のような家庭用ヒット商品は、直近の20年間にはない。強いて上げれば、スマートホンやiPadのような通信機器だけである。

 例えば、オーディオ機器のように、媒体がCDからデータによる録音・再生になって、部分的に進化し続けている分野の製品もあるが、新規の新しい商品を生み出すまでに至っていない。従来の製品カテゴリーを破る新機軸のモノは、出現していない。

 これは、全世界的にイノベーション(技術革新)が衰えてきたのではないかと思われる。

 従来品の部分的改良に止まり、新規の画期的な商品が開発されなくなってきているのでないか。あるいは、技術的に開発できないことになっているのでないか。

 画期的な商品として、私が思いつくのは、距離に関係なく瞬間移動できる装置、雪を熱以外の方法で効率的に溶かす技術、タイムマシンなどである。これらは、現在の科学的知見では開発できないかも知れない。私は、当面、画期的商品のイノベーションが起きないと予想しているため、長期的トレンドとして、経済的に低迷し不況になる可能性は著しく高いと考えている。私は、このような前提で物事を考え、それに備える準備をしている。

 平成28年3月9日   トランプ台頭など政治的にも不安定な予感がする    公認会計士 村山秀幸