山形市の村山公認会計士事務所|経営サポート税務相談 税理士

コラム

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理解と実感の間

    20年ほど前、ある経営者から言われたことがある。

 「経営」は「想い」でやるものだ、と。

 そのときは、想いがなければそもそもビジネスを始めなかっただろうし、また、想いの中に理想とするものがなければ、経営に推進力がなくなるから、それは当たり前のことだと思っていたし、理解しているつもりだった。

 しかし、この年まで会計事務所を曲がりなりに経営してきて、実感として感ずるものがある。

 人によっては、経営は仕組みで行うものだ、とか、従業員にいかに懸命に働いてもらうかだ、とか、経営とはアイディアを現実化するものだ、などといわれることがある。それはそれで、真実なのかもしれないが、経営者に想いがなければ始まらない。その想いが強く持続するほど、その人が行っている経営により色濃く反映する。

 これは、理解しているのと実感しているのとでは異なるということである。20年前は、本当にわかっていなかったのだ。実感している人は、それが血肉になっているのである。

 たとえば、私の経験であるが、夏目漱石の「坊ちゃん」や「こころ」などの作品を学校の課題図書だったため、中学の頃、読んだ時、なんでこれが名作なのかと思ったものである。また、その内容は断片的に理解できても、その主題とするところが何であるのか、何を言いたいのか、不明であった。今でも、読む気になれない。だから、いまだに名作の実感はない。しかし、小説好きの友達に言わせると、優れた小説という実感はあるそうである。小説読みとしては、私の場合、中途半端だということであろう。

 さらに、以前の私は、アイディアの重要性は理解していても、結局は経営というのは、人が一生懸命働いて行うものだから、アイディアの力が働くのは全体の一部分という意識があり、アイディアの本当の力や価値を十分に実感しているとは言い難かった。しかし、「20歳のときに知っておきたかったこと」(ティナ・シーリグ著)を読んで、アイディアとは、まさに世界を変えるものなのだ、ということを実感した。シーリグはスタンフォード大学の教授で、ゼミの学生に、次のような課題を出した。 「いま、手元に5ドルある。2時間でできるだけ増やせ。課題に充てられる時間(考慮時間)は、水曜日の午後から日曜日の夕方まで。この間、計画を練る時間はいくら使ってもかまわないが、元手となる5ドルの封筒を開封したら、2時間以内にできるだけお金を増やさなければならない。学生を14チームに分ける。各チームは実際にどんなことをしたのかを一枚のスライドにまとめ、日曜日の夕方に提出してもらう。そして、月曜日の午後、チームごとに3分間で発表してもらう。」

 さまざまなアイディアが出て、現実に大金を稼いだチームがあった。例えば、行列のできるレストランに学生が並んで、並びたくない客にその順番の権利を売却するというアイディア。学生会館の真ん前で自転車の空気圧を無料で調べ、必要なら1ドルで空気を入れるというアイディア。しかし、最も、稼いだチームは、「あっ」と驚くアイディアであった。私は、この最も稼いだチームの答えを知った時、一生掛かっても出てこないアイディアだと深く感銘・実感した。

 この課題は、アイディアの力を実感してもらうため、皆さんも真剣に考えてみてください。一生懸命考えた後、その答えを聞いた時、まさに、本当のアイディアの価値を「実感」するでしょう。

 平成3031日  答えを知りたい人は、ネットで調べるか、上記の本を買うか、若しくは・・・・。    公認会計士 村山秀幸